動物にも献血はある。供血動物の現状とジビエペットフードの役割とは

みなさんは、動物にも献血があることをご存知でしょうか。人間の行う献血は、献血カーや献血ルームを準備することで様々な場所で受けられるようになっており、今では珍しくない光景ですね。

一方、動物にも献血があります。人間と同じように病気やけがで血液が足りなくなった動物に輸血できるように、血液を提供する動物を「供血動物」と呼びます。大切な家族であるわんちゃんが、なんらかの病気にかかったり事故で怪我をしてしまったりして輸血が必要になったとき、血液ドナーがあれば安心ですよね。

しかし、日本では動物医療における血液バンクが認められていないため、血液の安定確保ができないという課題を抱えているのです。今回の記事では、そんな供血動物の現状や供血動物へのケア、またケアとして取り入れるべきジビエの役割について解説していきます。

目次

供血ができるのはどんな動物?

供血動物とはその名の通り、血液を分け与えてくれる動物のことを指します。では、どんな動物でもできるのかというとそうではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは主に、わんちゃんとねこちゃんについて解説していきます。

■供血できる条件

🐶わんちゃんの場合

  • 年齢:1~7歳
  • 体重:10㎏以上
  • 抗原検査:フィラリア抗原検査を行い、陰性であること
  • ワクチン:5種混合、狂犬病予防注射が接種済みであること
  • その他検査:一般身体検査、血液検査、尿検査、便検査を行い、すべて異常無しであること

😺ねこちゃんの場合

  • 年齢:1~7歳
  • 体重:4㎏以上
  • 抗原検査:猫白血病ウイルス、猫エイズウイルスの検査を行い、すべて陰性であること
  • ワクチン:3種混合ワクチンが接種済みであること
  • その他検査:一般身体検査、血液検査、尿検査、便検査を行い、すべて異常無しであること

このように、身体的条件や必要な検査をきちんと行い、異常が無いかどうかが必須条件となっています。この条件を満たしている上で、さらに必要となってくるのが「輸血直前の検査」になります。

■輸血直前の血液型検査

条件に合う供血動物(ドナー)が見つかったら、血液型が適合するかを調べる検査が必要になります。人間のようなABO式血液型とは違いますが、わんちゃんやねこちゃんにも血液型があることをご存知でしょうか。

🐶わんちゃんの血液型

わんちゃんの血液型はDEA式に分類されます。DEAとは犬赤血球抗原(Dog Erythrocyte Antigens)の略で、全部で8種類~13種類あると言われており、それぞれが+なのか-なのか、つまり抗原を持っているのか持っていないのかで、血液型が決められます。

また、人間のように一人に一つの型というわけではなく「このわんちゃんの血液型はDEA1.1(-)、DEA1.2(+)、DEA3(-)です」というように、複数の型を持つという複雑な血液型分類をするのです。

そして、この血液型の種類で重要となるのが「DEA1.1」という型で、この型が最も強い抗原抗体反応を起こすと言われています。つまり、血液型がDEA1.1(+)型か、DEA1.1(-)型かの判定が輸血する上でのポイントとなるのです。

🐶わんちゃんが輸血する場合の組み合わせ

上の表は、輸血の組み合わせを表したものです。

供血犬がDEA1.1(+)だった場合、同じ型を持つわんちゃんには問題なく輸血ができますが、DEA1.1(-)に輸血すると血液不適合反応と言って、発熱や嘔吐、下痢、血色素尿、血尿、ふるえ、不整脈などを発症する恐れがあります。

しかし、供血犬がDEA1.1(-)だった場合は、DEA1.1(+)はもちろん、DEA1.1(-)でも問題なく輸血することができます。(人間のO型と同じ特徴ですね!)

わんちゃんの場合、異なる血液型に対する抗体は、生まれながらにして持っているのではなく、輸血や妊娠などによって獲得します。そのため輸血や妊娠の経験が無いわんちゃんでは、異なる血液型を輸血してもトラブルが起きにくいと言われています。とはいえ、100%問題が無いとは言いきれません。リスクを軽減するためにも血液型の検査を受け、適合した血液型を供血(あるいは輸血)できるようにしましょう。

🐱ねこちゃんの血液型

ねこちゃんの血液型は「猫AB式」で、A型、B型、AB型の3種類に分類されます。

中でもA型の血液型を持つねこちゃんが大半で、日本では70%〜90%の割合で存在しています。猫種によってはB型の割合が多いねこちゃんもいますが、日本の在来種、いわゆる雑種のほとんどはA型であり、B型は10%未満、AB型はごくごく稀であると言われています。

そして、ねこちゃんはわんちゃんと違い、生まれながらにして他の血液型に対する抗体を持っているのが特徴です。

😺ねこちゃんが輸血する場合の組み合わせ

A型のねこちゃんは抗B型抗体を持ち、B型のねこちゃんは抗A型抗体を持っています。特にB型のねこちゃんの抗A型抗体は強く、A型の血液を輸血してしまうと激しい血液不適合反応が起こり、最悪の場合死に至る恐れがあります。

過去にも血液型が不明のまま輸血を行った結果、症例の約30%が致死的な症状を引き起こしたというデータもあるほどリスクが高い行為となります。

このように、健康に異常がなく、身体的条件をクリアしていても血液検査の結果では、組み合わせが適合せず輸血できない場合もあります。治療のための輸血で症状が悪化してしまっては本末転倒です。時間を要しても必ず血液検査を行わなければいけません。

血液判定検査は、血液型判定検査キットや重大な副作用を防止するためのクロスマッチ試験と言って、血液不適合反応が起きないかどうかを検査する方法があります。キットや設備が整っていれば、どちらも動物病院で行えるので、しっかりと検査を受けましょう。

供血動物の現状

供血動物が見つからないことには輸血ができませんが、冒頭でも紹介した通り今日の日本の動物医療では、血液バンクが認められていません。

また採血できる量は体重が10キロの大型犬でも100〜200㎖ほどと、とても少ないのです。供血動物の負担を考えると次に採血するには、最低でも1ヵ月以上間隔を空ける必要があります。また近年は飼いやすさなどから小型犬を飼う人が増加しているため、さらに採血量が限られているという問題を抱えています。

そういった現状を踏まえ、供血動物としてわんちゃんやねこちゃんを動物病院内で飼っていたり、ボランティアで血液提供に協力してくれるわんちゃんやねこちゃんを、あらかじめ登録しておくドナー制度を設けたりして、動物医療の現場は耐えているような状況なのです。

もし大切な家族であるわんちゃんねこちゃんが、輸血を必要とする状況になったら?

仮にあなたの家族であるわんちゃんねこちゃんが輸血を必要とするには、どのような方法があるのでしょうか。

  • 動物病院で登録されている供血動物から輸血してもらう
  • 同居動物から輸血してもらう
  • 友人、家族などが飼っている動物から輸血してもらう
  • 動物病院にいる供血動物から輸血してもらう

上記のような限られた選択肢の中から適合するドナーを自ら見つけ、必要な血液量を確保しなければならないというのが、今の日本における供血動物の現状なのです。

供血動物を癒したい~必要なジビエによるケア~

下の表は輸血のために供血動物から採血できる量です。

例えば、体重が10㎏の供血犬なら100〜200㎖の採血が可能です。

採血量は体に負担の少ない量ですが、検査で行う採血よりもはるかに多くの時間がかかり、諸々の検査でも負担になってしまうことは確かです。採血後に水分補給のための皮下点滴は行われますが、帰宅後もしっかりと水分補給を行い、2〜3日は遠出や来客などの環境の変化は控えてゆっくり体を休ませてあげてください。

そして、採血後のケアで重視したいのが食事です。採血後は水分だけでなく、失った血液を新たに作るための鉄分やタンパク質、ミネラルが必要になってくるのですが、そんなときに取り入れたいのがシカ肉です。

野生動物のお肉を指すジビエという言葉を耳にされる方も多くなってきたのではないでしょうか。シカ肉は日本のジビエを代表するお肉の一つ。高たんぱくで低カロリーという特徴が人間だけでなくペットフードにも良いとされ、多くの商品が販売されています。

肉はもちろんですが、採血後に与える場合、特にお勧めしたいのが「シカ肉の肝臓」です!

なぜシカ肉の肝臓がいいの?

まず鹿肉の栄養価を見てみましょう。

エネルギー
(kcal)
たんぱく質
(g)
脂質
(g)
鉄分
(mg)
ビタミンB1
(mg)
ビタミンB2
(mg)
ビタミンB6
(mg)
ビタミンB12
(μg)
鹿肉11923.943.90.20.350.61.3
牛肉29417.125.820.070.170.351.4
猪肉24418.819.82.50.240.240.351.7
豚肉23717.119.20.60.630.630.280.5
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

鹿肉の赤身肉は牛や豚に比べるとカロリーは半分以下、タンパク質は1.5倍以上含まれています。さらに赤血球の成分となる鉄分は牛に比べて約2倍、豚に至っては6倍以上という数値が出ており、一般的に鉄分豊富と呼ばれる牡蠣や馬肉よりも多く含まれています。鉄分の他にもヘモグロビンの合成に関わる銅は牛や豚、鶏と比べて約3倍の量が含まれていることがわかっており、「採血をしたらシカ肉を!」というくらいピッタリな食材となっています。

このように、肉だけでも十分な栄養が摂れますが、鹿肉の肝臓にはさらに血液をつくる際に必要な「造血のビタミン」とまで呼ばれるビタミンB12と葉酸がとても多く含まれているため、供血で血液が減ってしまった状態の体にはぜひ取り入れてあげてほしい食材です。

どのように与えるのがいいの?

鹿肉の肝臓はレトルトやドライジャーキーなど、様々な形状で販売されています。

食事で与える場合

レトルトやフレッシュタイプのものを、普段のご飯にトッピングするのがおススメです。シカ肉は嗜好性の高い香りが特徴ですが、肝臓はさらに香り高くわんちゃんの食いつきも期待できます。フレッシュタイプを与える場合は、加熱してトッピングしてあげてください。

おやつで与える場合

ジャーキーに加工された肝臓がおすすめです。乾燥された肝臓はパリパリとキレが良く、割ったところから香ばしい香りが広がります。簡単に細かく砕くことができるので与えやすく、粉々にすればふりかけとしても与えることができます。

より詳しい与え方や、他の商品はこちらの記事をご覧ください

最後に

いかがでしたでしょうか。この記事では供血動物と、ジビエを利用したケアについてご紹介しました。供血と言う言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、すこしでも身近に感じていただけましたか?

動物医療の血液ドナーは全国各地の病院で募集しています。輸血をすることで救える命も多くあり、そのためには安定した血液の確保と供血動物へのケアがとても重要になります。

安定した血液確保のために、供血動物のドナー登録を募集している動物病院をいくつか紹介します。

供血で頑張ったわんちゃんねこちゃんには、栄養満点なジビエでしっかり栄養を補給し、十分なケアで労わってあげてくださいね。

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