女性でもハンターになれる!?女性がハンターになる上で気を付けておきたいポイントとは

昨今、狩猟ブームにより若手ハンターが増えつつある中、女性ハンターにも注目が集まっています。今回は狩猟人口の現状と女性ハンターについてご紹介します。

このブログは、女性猟師として活動する林利栄子(はやし・りえこ)がまとめました。京都で猟師を始めて8年目、当初は女性の猟師と出会うことは滅多にありませんでした。最近は同世代の女性猟師が増え、女性ハンターならではの悩みや困り事などを共有し合えるほど仲間に出会うことができ、性別を超えた広がりを感じています。今回のブログでは実体験や友人ハンターの話を元に、女性ハンター特有の悩み事などをご紹介します。

目次

1.狩猟人口の現状

年齢別狩猟人口の推移

まずは狩猟人口(狩猟免許保持者)の現状を見てみましょう。下の図は、20〜29歳の若手猟師が最も少なかった平成18年からの狩猟人口の推移を表したグラフです。

狩猟免許所持者の多くは60歳以上であり、狩猟人口の半数以上を占めているのがわかります。60歳以上の中には70歳〜80歳代も多く、年齢的にいつ猟師を引退してもおかしくない状態です。

そのような現状の中、各地で若手ハンターの集客・育成を目的とした狩猟イベントや狩猟体験ツアーといった、様々な催しが開かれています。狩猟ブーム、狩りガールブームなどもあった結果、20〜29歳の狩猟者が最も少なかった平成18年から狩猟者は増加し続けており、平成28年には3倍以上の人口増加となっています。

そして、若手の増加とともに注目されているのが女性ハンターの存在です。

女性ハンターの増加率

 下記の表は環境省より引用した年代別狩猟人口に占める女性の割合を示したものです。平成27年度に狩猟免許を取得した女性4,181人を都道府県別にみると、北海道が520人で最も多く、次いで東京都292人、長野県240人、神奈川県193人、兵庫県185人となっており、地方だけでなく都市部でも女性の狩猟に対する関心が高まっているのがうかがえます。

平成23年度から見ると女性の狩猟人口は2倍以上に増加していますが、全体でみると約2%。まだまだ多いとは言えませんが、男性社会と言われる狩猟業界に飛び込む女性ハンターの活躍は目覚ましく、多くのメディア等でも紹介されており、これからの狩猟業界を担う人材として注目されているのです。

2.女性ハンターを目指すときに気を付けておきたいこと

では、男性社会と呼ばれる狩猟業界で、女性はどのように活動しているのでしょうか。

まず、狩猟を始めたいと考えている女性からの質問ナンバー1が「女性がハンターになるのは難しい?」ということです。

答えはずばり、全く難しくありません!

どこで狩猟をするのか、誰に教わるのか、道具は何を集めればいいのか。狩猟を始めるとき、男性であれ女性であれ、抱える悩みは同じです。体力面においては、男性よりも女性の方が心配することがあるかもしれませんが、基本的にはチームで活動をするため、協力し合える人間関係を築くことの方が大切です。むしろ女性が狩猟をするにあたってハードルとなることは、体力よりも心理的なことの方が大きくなります

ここでは、女性ならではのハードルや悩み事、またその対処法についてご紹介します。

悩み事その① トイレ問題

狩猟をする場所は山の中。一歩入ってしまえば(もっと言えば地域に入ったときから)トイレや手洗い場などはありません。デリケートな問題だからこそ、なかなか相談できる機会がなく、悩んでいる女性猟師も多い問題。ここでは、特に気を付けておきたいポイントをまとめました。

トイレは必ず狩猟開始前に済ませておこう

これは男女関係なく全員に必要な準備のひとつ。男性のようにサクッとその場で済ませられない女性は特に怠ることができません。近隣のトイレスポットは必ずチェックしておきましょう。山

グループのメンバーにきちんと共有しておいてもらう

狩猟中に行きたくなってしまっても、途中で下山してトイレに向かうことはできないということを覚悟しておきましょう。緊急の場合はその場で済ますしかないため、同じエリアに入ったメンバーには行きたくなったときの合図を共有し、人が近づいて来ないようにしてもらうことが大切です。出たごみは持ち帰れるように不透明のごみ袋を携帯しておくと便利です。

衛生用品の携帯、紙おむつの活用も

ティッシュやゴミ袋などの他にも、用を足した後に使うウェットティッシュや簡易携帯トイレなどを持っておくと安心です。また冬がシーズンとなる狩猟では、服装も厚着になりトイレのための着脱も一苦労となります。そんなときは思い切って大人用おむつなどを活用するのも一つの手。大幅な負担の軽減にもなり、かつ衛生的です。

月経になっているときは?

女性ハンターにとって一番気になるのはこの問題かもしれません。私も過去に「月経中は血の匂いがするから出猟しない方がよいか」という相談を受けたことがあります。最近の生理用品は品質が高く、使用感の良さやにおい対策に向いた商品もたくさん出ているので、月経が出猟の妨げになることは特にないと感じています。それよりも問題なのは体調の変化です。月経中は疲れやすかったり、体調や気分の浮き沈みも激しくなります。また強い睡魔に襲われたり集中できないといった不調も起こりやすくなります。狩猟は体力を使うだけでなく、重く危険を伴う銃器を扱うため、体調がよくない時は休むという判断をとりましょう。

 

女性ならではの悩みはなかなか男性に言いにくいものですよね。しかし、女性が猟師になると決めたときから覚悟しておくべき大切な事柄です。もしものときに困ることのないように、持ち物の準備と心構えをしておきましょう!

悩みその② 変化しやすい女性のライフスタイルとどう向き合う?

近年は男女平等社会と言われていますが、まだまだ女性のライフスタイルは変化しやすいものです。例えば結婚で姓や住所が変わると、すみやかに都道府県担当部署へ届け出を行わなければいけません。また出産による体の変化や育児などで自分の時間を確保することも難しくなり、狩猟まで手が回らない時期も出てくるでしょう。

狩猟免許を取得するときは、様々な変化を見据えてプランを組むことが長く狩猟を続けられるコツになります。次に挙げる3点は、私が猟師を続ける中で感じたことや、知り合いの女性猟師が悩んでいたことをまとめたものです。他にもあるとは思いますが、まずはこちらを参考にしてみてください。

家族や職場といったまわりからの理解を得ておくこと

まず第一にしておかなくてはいけないのが、家族やまわりの人からの理解を得ることです。これは男女に限らず、狩猟者なら必ずしておかなければなりません。

特に女性は男性に比べ力も弱く、もしも野生動物に襲われたら…と、家族から大きな心配をかけられやすくなります。誰とどこで猟をして、安全に猟が出来るようにどんな工夫をしているのかなど、しっかりと説明しておきましょう。狩猟はいつも危険と隣り合わせです。きちんと説明しておかないと危ないからという理由で狩猟すること自体反対されることもしばしば。安心して送り出してもらえる状況を整えることはとても重要となります。

また職場にも伝えておくことも大切です。狩猟免許の取得に関する手続きは平日しか受けらないため、急な休みを取らなくてはいけなくなる場合も多く、誰かに仕事を変わってもらわなければいけなくなることも。あらかじめそのような予定が入ることを仕事仲間に伝えておくことはお互いのためにもなります。

「どこで」「誰と」猟をしたいのかをはっきりとさせること

狩猟は、狩猟登録した場所でしかできません。狩猟をしたい場所がある都道府県ごとに、狩猟登録や税金を納めないとその場所で猟をすることは出来ないので、ある程度エリアを絞っておく必要があります。

そしてライフステージによって特に生活圏が変わりやすくなるのが女性です。結婚や家族の事情などで住まいが変わったり、パートナーが転勤の多い仕事だったりすると、なかなか一つの土地に落ち着くことができず、猟師になることを諦めてしまう方も少なくありません。まずは自分自身がどこで誰と猟をしたいのかをはっきりとさせ、その意思を軸に生活環境を考えたいことをパートナーや家族と共有しておくことが大切です。また、踏まえて狩猟する地域を決めておくのも◎。ですが、初心者にとって知り合いのいない初めての場所で狩猟を始めるのは、無謀と言っても過言ではありません。

出産や育児が始まったときにどうしたいかを共有しておく

最近は男性も育休を取得するなど、出産育児への意識が変化してきています。将来的に子どもが欲しいとなったときに、どんな風に狩猟を続けたいかイメージしておきましょう。自宅から通いやすい猟場の確認、狩猟時間の短縮など、何時間までなら家を空けられるかパートナーや家族とよく相談しておくことが大切です。出産する時期と狩猟シーズンが重なったときは、狩猟登録はやめておくこともひとつです。毎週末出猟するよりも細く長く続けることが、どんな状況でも続けられるコツとなります。

0歳児の母となった私のある日の狩猟スタイル

4:00 起床/授乳

4:40 身支度(息子は父or祖母の布団の中へ…)

5:10 出発

5:30 集合/猟場の選定、待ち場の確認

6:00 待ち場到着/日の出スタート

8:30 解散

9:00 帰宅/授乳

さすがに生後5か月の乳児を置いて狩猟は厳しいか…!?と諦めていましたが、夫や祖父母のサポートを受けられたこと、子育てに理解ある狩猟メンバーや同世代のママさん猟師から声をかけていただけたことで、何とか出猟することができました。終わった後の雑談も早々に切り上げて解散できるのは理解あるメンバーだからこそ。そのかわり、猟期が終ってからの打ち上げは子連れで参加し、話したかったことや振り返りもゆっくり行うことができました。これから引退する猟師さんは狩猟人口の大半を占めいている高齢者となります。残った若い狩猟者や女性猟師たちが活躍するためにも、それぞれのライフスタイルに合った無理のない狩猟スタイルを生み出し認め合うことで、さらに狩猟の間口は広がるのではと感じました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。女性が狩猟を始めるときにハードルとなるのは、体力よりも心理的なことの方が大きいかもしれません。

しかし、今は女性ハンターだけのサークルやSNSグループなど様々なコミュニティが立ち上がっており、以前よりぐっと近くにその存在を感じることができるようになりました。女性ハンターには、狩猟を毎日の食事や生活スタイルと組み合わせたり、捕獲した獲物の角や骨などを活用したアクセサリーを作ったりと、狩猟だけではない楽しみ方を見つけている方が多くいらっしゃいます。まずは実際に活躍している女性猟師の活動を見てみるのもひとつ。ぜひフットワークを軽くして、女性ハンターの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

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